SDRという開発手法
“SDR”とは”Software Defined Radio(ソフトウェアディファインドレディオ)”の略で「ソフトウェア定義無線」等と呼ばれておりますが、一言で言えば
ソフトウェアでプログラミングをして 無線機として動作するシステムを組み上げていく
という仕組みです。 具体的には、
- ソフトウェア無線機と呼ばれる広帯域に対応した汎用の市販されている無線機を使います。
- ソフトウェア無線機は、FPGAを搭載しておりリアルタイムの信号処理が実装可能で、この信号処理部分をプログラミングすることが出来ます。
- リアルタイムな動作が必要のない場合には、搭載されているFPGAを使用せずに接続したPC上で無線信号処理をプログラミングして処理を行うことができます。
FPGAを使う場合は、
-
- 変調や復調、等化器などの部分をFPGAのプログラミングして作ります。
- このプログラムをソフトウェア無線機のFPGAに書き込むことで、ソフトウェア無線機はリアルタイムの動作をすることができるようになります
FPGAを使わない場合は、
-
- 変調や復調などの信号処理をMATLAB、LabVIEWソフトウェアで作成します。
“SDR”以前の無線システム開発は主にRF回路・電子回路を設計・開発していたハードウェア開発でしたが、”SDR”はソフトウェア開発に重点が置かれており、ハードウェア開発のプロセスが一切ないのが、SDR開発の特徴です。
SDR開発のメリット
SDRの開発手法のメリットを以下に列挙します。
1. ハードウェアは販売されているものを購入する
SDR開発では、ハードウェアの開発コスト・リスクがありません。 メインとなるソフトウェア無線機はUSRPというシリーズで、世界中にユーザがいて市販されています。
世界中にユーザがいるということは、それだけ多くの人が使い、テストされていると言うこと。 このことは、実際に開発フェーズに入った際の安定感に繋がります。
従来型の開発手法では無線機そのものの開発コストや開発に失敗するリスクがありますが、SDRでは無縁です。
2. ライブラリ、開発環境が整っている、連携が容易
ソフトウェア無線機の良いところは、無線信号処理の大部分をソフトウェアで記述することです。
ハードウェアで無線機を作り上げる方法に比べ、開発や修正が容易です。
さらに使用するライブラリやソフトウェアや開発ツールが整っており、開発効率が向上します。
3. ソフトウェアで徐々に開発を進めていける
ソフトウェアベースの開発手法であるため、MATLABや他のシミュレーションソフトウェアとの連携が容易です。
例えば、
-
- 初期段階はMATLABで開発。
- ある程度実装が進んできたところで、LabVIEWに移植、もしくはLabVIEW内からMATLABを呼び出し。
- ソフトウェアで動作しだしたら、FPGAに移植開始。
という段階を踏んだ開発が容易です。
同じ開発手法は、従来型開発でも行っておりますがSDRの方が関連ツールとの親和性が高く開発効率がとても高くなっています。
SDR以前はどうだったのか?
実は2010年以前、ドルフィンシステムはSDR開発ではなく従来型の開発を行っていました。 各社のハードウェアを購入し組み合わせて試作機などを作成していましたが、工程の70%をデバッグが占めるなどとても効率が悪い開発手法でした。 しかしソフトウェア無線機を使用すればハードウェア開発をすることなく、FPGAやソフトウェアによる信号処理部分の開発に注力することができるため、より短期間で低リスクな開発を実現できました。
ではSDRでどのくらい効率が上がったのか?
↓
どのくらいの差が?LabVIEW FPGAと伝統的なVHDL開発の開発効率比較
LabVIEW / PXI でリスク無し、ストレスフリー試作機開発
ソフトウェア無線機のデメリット
ソフトウェア無線機の大きな弱点は、RF特性です。 例えば小型のソフトウェア無線機ではアナログデバイス AD9361というRFICが使われています。 これは10MHz~6GHzまでの周波数範囲をサポートしているRFICで、安価に小型の無線機を構成できるので多くの小型無線機に採用されていますが、特性に難があります。 高調波や低調波が多く出るため、特定の周波数帯では問題ないが別の周波数帯ではスプリアスがひどい・・・という状況になります。 非SDR機器の場合、外部にフィルタを用意したりRF回路を修正するなど対策を行えますがソフトウェア無線機の場合は “as is” で使うしかありません。 ※ “as is” : 現状のとおりで、現状のまま、の意。
SDR開発の実績
弊社のソフトウェア無線機を使用した試作機開発では、お客様が行いたい試作・実験内容に応じた無線システムや送受信機、測定器を、短期間で開発しています。 弊社は長年無線信号処理の経験に加え、早期に先進のソフトウェア無線機に取り組むことで、多くの実績を残して来ました。
ドルフィンシステムによる無線開発事例をご紹介します
JAXA|宇宙航空研究開発機構 | NICT | 情報通信研究機構 |
![]() ソフトウェア無線技術を利用した小型安価なテレメータ受信局の実証 もっと読む | ![]() NIのソフトウェア無線製品を活用し、5G向け新技術の実証実験用システムを構築 もっと読む |
JAXA|宇宙航空研究開発機構 | NICT | 情報通信研究機構 |
![]() PXI 製品により、ロケットからのRF信号の長時間記録と再生に成功 もっと読む | ![]() 無人飛行機用制御回線における無線通信技術仕様の策定に向けて、 小型プロペラ機に搭載可能な無線計測システムをPXIベースで構築 もっと読む |
京都大学 | A研究所 |
![]() NI LabVIEWとRFモジュールの活用で、マルチユーザMIMOの実証実験システムを構築 もっと読む | ![]() ミリ波をレコーディングしてLTE信号の伝搬環境解析 もっと読む |
国内通信キャリア研究所 | |
![]() | |
LabVIEWとNI RFモジュール式計測器を使用して動的周波数選択(DFS)機能認証テストシステムを開発 |

National Instruments 社による、LabVIEW / PXI を用いた無線研究開発の事例をご紹介します
ST-Ericsson | 日本無線 |
![]() | ![]() |
LabVIEWとPXI RF計測器を用いてICのテスト時間を1/10に短縮 もっと読む | アクティブフェーズドアレーアンテナ制御用 もっと読む |
スタンフォード大学 | Qualcomm Atheros |
![]() | ![]() |
NI Universal Software Radio PeripheralとLabVIEWを使用して実践型の無線通信実験システムを開発 もっと読む | NI PXIベクトル信号トランシーバとNI LabVIEWを使用して無線LANテストの速度向上と受信範囲拡大を実現 もっと読む |
